2019年11月17日(日)、「静岡市番町市民活動センター」にて、子どものための無料のプログラミング道場「第17回CoderDojo静岡」が開催されました。 CoderDojo静岡は7~17歳の子どもを対象にしたプログラミング道場。 子どもたちに無料でプログラミングや情報技術に触れる機会を提供することを目的としており、ボランティア・有志の協力のもと、毎月1回、静岡市内でプログラミングイベントを開催しています。 CoderDojoの活動は2011年にアイルランドで始まり、世界には110カ国・2000の道場があるそうです。日本には全国に170以上の道場があります。(2019年4月時点)
開催日当日、受付開始と同時に続々と会場に親子連れが入ってきました。
テーマがプログラミングということもあってか、比較的父子連れが多い印象です。
席に着くと同時にパソコンを広げ、早々にプログラミングを始めるお子さんたち。
この日、会場には小学生低学年から高校生までのお子さんや保護者の方、そしてボランティアスタッフと50人近くの人が集まり、賑やかな雰囲気になっていました。
リピーターがとても多いため、初回参加はキャンセル待ちも多いほど人気のイベントだそうです。
CoderDojoには、「CoderDojo憲章」というのものが定められており、このような内容が規定されているそうです。
・道場に参加する子ども達やその保護者から料金を徴収しません
・持っている知識を自由かつオープンに共有します
・性別、人種、性的指向、信念、宗教、能力に関係なく、ボランティアや子ども達を歓迎します
いくつかの企業・団体から資金やパソコン提供などの支援を受けることで、無料での実施が実現しているといいます。
また、Coder Dojoに関わる人々は、次のように呼ばれています。
・子どもたち…ニンジャ
・技術補助など…メンター
・主催者…チャンピオン
世界共通の呼び名だそうで、海外でも子どもたちを「Ninja」と呼ぶそう。
呼び名も親近感を感じさせてくれますね。
経済産業省の調査によると、IoT(Internet of Things)の普及と、AI(人工知能)技術の急速な進展により、2030年には約80万人のIT技術者が不足すると言われています。
また2020年には、小学校でのプログラミング教育の必修化。
保護者の間でも関心が高く、プログラミング教室へ通わせる家庭も増えているようです。
「“勉強”ではなくプログラミングに“夢中”になって、楽しくなってくれたら」とCoderDojo静岡の代表・納本真志さんは語ります。
ちなみにこの日のスケジュールは次のようになっていました。
9:20 受付開始
9:30 CoderDojoの説明 ※2回目以降の参加者は各自でプログラミングをスタート
9:40 プログラミング体験
10:10 プログラム改造タイム
10:40 作品発表 ※2回目以降の参加者も一緒に
11:30 次回の案内
11:40 閉会
初回参加者は別室でCoderDojoの説明や、体験するプログラミング言語の基本的な操作方法を学び、2回目以降の参加者は1人、もしくは友だちに相談しながら思い思いにプログラムをつくっていきます。
今回、初参加の方向けに行われたプログラミング体験では、中学生の男の子が講師。
自らやりたいと志願したそう。
この日が初めての中学生講師だったため、周囲の大人たちがサポートしながら進行していきました。
プログラミングを始めるなら、マサチューセッツ工科大学(MITメディアラボ)が開発したビジュアルプログラミング言語「Scratch(スクラッチ)」がおすすめとのこと。
子ども向けにつくられており、日本語で書かれたブロックを組み合わせていくことで、簡単にプログラミングができます。
平仮名モードもあるため、小学校低学年のお子さんにも使えるそう。
簡単でありながらもゲームなどをつくることもでき、高度なプログラムも可能です。
「Scratch」を題材にした子ども向け教育番組もあり、この番組を機にこの「Scratch」を始めるお子さんも多いようです。
「Scratch」を立ち上げ、まずは「ネコのキャラクターを10歩動かす」というベーシックなプログラミングから。
メニューから日本語で書かれたコードをドラッグ&ドロップするだけというとてもシンプルな動作。
今は、小学校でもパソコンの授業が導入されているため、お子さんたちもマウス操作は慣れている様子でした。
「おもしろい! お母さんもやってみなよ!」。
そんな歓声を上げているお子さんも。
後半には自分がつくったプログラムを紹介する発表の場があります。
1人5~6分程度、10人ほどのお子さんや大人たちが発表しました。
司会は、ユースメンターと呼ばれるボランティアの中学生や高校生の男の子たちが務めます。
小学生の発表をサポートし、プログラムのアドバイスも。
発表は未完成のプログラムでも誰かのプログラムをアレンジしたものでもOK。
保護者の参加もOKだそうです。
ケイドロのゲーム、恐竜がかくれんぼするアニメーション、ケーキのデコレーションができるプログラム、スロットゲームなど、小学生とは思えない仕上がり。
後半はユースメンターの発表や、現役プログラマーの発表もあり、「あんなふうにできたら」と思い描くお子さんたちもいるようです。
何人かの保護者の方に「CoderDojo静岡」についてお話を伺ってみました。
「5回以上来ていると思います。子どもがパソコンを触りたがっていたので。私自身はプログラミングの知識はないのですが、子どもたちと一緒に楽しんでいます。長男は自宅でもプログラミングしていますね。こちらでも積極的に発表に参加しています。ここは否定されることなく、褒めてもらえる場所。長男のモチベーションにも繋がり、とても楽しみな場になっているようです。パソコンは将来的に必ず使っていかなければならないもの。好きになってくれたらと思っています」。
「兄が教育テレビでScratchを知ったのをきっかけに、参加しました。こちらへは1年ほど利用させてもらっています。子どもたちもとても楽しそうで、毎回、発表もするんです。私自身はプログラミングの知識はないため、こういった無料の場は嬉しいですね」。
「今回が2回目の参加です。子どもはいくつかのプログラミング教室に通うなど、いろいろ見て回っています。家でもプログラミングをしていることが多く、Scratchは1年半くらい触れていると思います。勉強があまり好きではない子なので、プログラミングで開花してくれたらと思っています」。
「2回目の参加です。プログラミング教室に2年ほど通っていますが、もう少し高度なことができたらと思い、来ています。今はパソコンが必須の時代。パソコンへの苦手意識がなくなってくれたらいいですね」。
「こちらへは長く通わせていただいています。Scratchは中学2年生の頃から自分で動画を観ながら始めました。無料で利用できるのが嬉しいですね。家でもできますが、ここは集中してプログラムができるので気に入っているみたいです。自分でゲームがつくれるようになって、将来はプログラマーになりたいそうです。私自身は連れてきてただ見守っているだけ。他の子たちがプログラミングをしている姿を見るのも楽しみの一つです」。
「学校では普段発表することができない子も、ここでならできると言っている子もいます。学校に自分の居場所がないと感じている子もいて、学校と違う居場所になっているようです」と話すボランティアスタッフ。
「初めは参加しても無言だったユースメンターの子も、今ではコミュニケーションが取れるように。プログラミングでわからない部分があれば、ユースメンターの子たちが教えに行くのですが、一から十まで教えるのではなく、子どもたちが考えるヒントになるようなアドバイスを行っているんです。『全部教えたらつまらないでしょ』と言っていました。私たち大人が何か教えたわけではないですが、中学生の男の子がそこまで考えられるようになっているのはすごいことだなと感じています」。
ある程度のプログラムの知識を持つユースメンターや大人のボランティアスタッフにとっても、豊かな発想を持つ小学生の子どもたちのプログラムは、とても刺激になっているそうです。
「技術を知らないからこその発想は、本当にすごいです」。
更新日: 2020/01/23 (木) 15:07