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「登呂会議/ARTORO(アートロ)」

 静岡市

2010年に発足した任意団体「登呂会議」。登呂遺跡がある静岡市立登呂遺跡博物館にて、「ARTORO(アートロ)」の名前で全6〜7回程度の講座と、数回の1日講座を開催しています。これまでに、弥生時代の暮らしを学びながら、当時の米づくりや土器づくり、道具づくり、家づくりなどを、体験したり実験したりする活動を行ってきました。そこから見えてくる新たな「?」や「!」は、大人も子どもも大きな気づきとなっているそうです。「登呂会議/ARTORO(アートロ)」の活動について、代表の美術家・本原令子さんと、一級建築士/インテリアコーディネーターの伊達剛さんにお話を伺いました。

登呂遺跡・登呂博物館を舞台に始まった「登呂会議」

「登呂会議」は、2010年の国指定特別史跡登呂遺跡・静岡市立登呂博物館リニューアルとともに発足しました。博物館で学び、遺跡で体験する「文化教育環境」の実現を目的に、古代・考古学をテーマにした「体験」「感動」「学び」「遊び」をつくる活動を行っているといいます。

代表の本原さんは2011年の東日本大震災の後、現地を2度訪れ、積み上がった瓦礫やゴミの山を目の当たりにしました。ここにあるゴミとなってしまったものは、かつて生活の中で使われていたものだったり、家屋だったりしたもの。震災で発生したゴミは、その土地の何十年分ものゴミの量に当たると言われています。これらは本当に必要なものだったのか、疑問に思ったとのこと。土があれば、食糧も作ることができるし、器も鍋となる土器を作ることができる。土さえあれば生きていけるのではないかと感じたと言います。

昔の生活を見直すことで今の暮らしに必要なものと失われたものが見出せるのではないか。使われないものは作らずに済むように、新しい目線を見つけられたら。そして、ここでの気づきが家での日常生活や職場などの社会の中に生かされたら嬉しいと思い、この活動をしているそうです。

弥生時代は土から様々なものを生み出していた。実験を通して新しい気づきを見つける

「登呂会議」の中には、「ARTORO(アートロ)」という実験・活動の場があります。これに参加するメンバーは幅広く、その年によって各分野の専門家が携わったり、関心がある学生が参加したりと、入れ替わりを繰り返しています。現・代表の本原さんもその一人。陶芸家でもある本原さんは、2012年に土器づくりを行う際の専門講師として参加。今では代表を務めています。他にもお米屋さん、宮大工、大学の教授、建築家、茅葺き屋根の職人、木工作家、デザイナーなど、職業も性別も年代も様々。新しく人が入ったり、また卒業していったりするのもこちらの団体の活動をおもしろくさせている部分。型にはまり過ぎないことが、活動に広がりを持たせているのではないでしょうか。

2013年〜2015年にかけては「土がぼくらにくれたもの」をテーマに、土で米、土で器、土で楽器など、土を使った実験体験・学びを行いました。弥生時代には、土で稲を育て、土で器を作り、土器で調理をして食していました。実験・体験を通じて、機械を使わず、昔のやり方で田植えをし、収穫をし、そして作った土器で炊飯する。これらの一連の体験を通し、先人たちの知恵や工夫が積み重ねられ、現代の暮らしがあるという気づきを見つけることができたと言います。
「教科書では弥生時代の暮らしはこうだったと学んだけれども、本当にそうだった?」「土器のデザインはなぜこうなの?」「土器の底にはなぜ葉っぱの模様があるの?」などの様々な疑問を自ら問いかけ、考えることで、現代に生きる力を育んできました。

弥生時代の家は建売住宅みたいに同じ形だったの?

2017〜2018年には、「土の跡から住まいを創造する」をテーマに開催しました。弥生時代の住居は「茅葺き三角屋根の竪穴式住居だったと言われているけれど、本当にそうだった?」「全ての家が建売住宅みたいに同じ形だったの?」などといった疑問を紐解いていきました。実は、登呂遺跡があった場所は3回も洪水があったのにもかかわらず、当時の人々は何度もこの地に家を建て直したことがわかっているそうです。なぜ登呂遺跡のある場所が当時の人々にとって暮らしやすい場所だったのか、実際に歩いて回るというフィールドワークを行い、ジオラマや地層マップを作成しました。

2020年2月には、「○から□、杉で柱をつくろう」をテーマに、登呂遺跡の地面に残された4つの四角の柱の跡について紐解きました。山から木を切ってきて住居を作るのなら、柱は切ってきただけの円柱の状態でよかったはず。しかし、登呂遺跡では柱が角柱であったと推測されます。また登呂遺跡では、住居や田んぼ跡から多くの木杭が使われていたことがわかっています。これらのことから「丸い木から角柱をつくる際にできる切端の部分を、杭などに加工していたのでは?」などといった疑問が生まれ、「なぜ○から□にしたのか」を様々な角度から検証することとなりました。

検証中、効率よく角材にしていく過程で、参加者が楔(くさび)をカンナ代わりに使用するように。
便利な道具がない中で、参加者の中からこのようなアイデアが生まれたのは、講師を担当した考古学の専門家にとっても、非常に面白い発見だったそうです。専門家の考古学的視点と参加者の気づきが交わることで、多くの発見や疑問が生まれ、とても有意義な講座になったのは言うまでもありません。

参加者からの声

「ARTORO(アートロ)」の活動は、小学5年生以上を対象とし、SNSなどを通じて参加者を募集しています。東京などからの参加者もいるなど、静岡市以外の参加者も多いと言います。これまでの参加者からの感想をご紹介します。

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「考え方やものの見方が変わった。今まで気づかなかったいろいろなことに興味を持つようになった。なぜ?という疑問について、もっと歴史を含めて勉強してみたい」

「考えることが多かった。自分のルーツや歴史に興味を持った。生きる力が湧いた」

「昔の人の努力や恩恵を受けているんだなということを知ると、今の生き方や考え方が変わった。自分の内面を豊かにできた」

「田んぼの土で土器が作れることに驚いた。学校で縄文時代と弥生時代の土器の違いを習ったことは覚えているけれど、本当の意味でわかっていなかったことを気づかされました。実際にどうやって作ったのかを考えていくことは昔の人との知恵くらべのようで面白かった」

「子どもの頃の生活には『?』『!』があふれていたけれど、現代に生きる私たちは、完成された生活環境の中を不自由なく生きているので、疑問に思ったり、何かを発見することが減ってしまったと思う」

「同じ人間である昔の人に立ち返ると、いろいろなものが見えてきた。私は未来に何ができるかをたくさん考えさせられました」

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「ARTORO(アートロ)」の活動を通じて、考える力や生きる力を養う

現代の暮らしはご飯を食べようと思うと、精米されたお米を買ってきて、炊飯器に入れてボタンを押せば自動でおいしくご飯が炊けます。お米を自分で作る苦労も、器を作る苦労も、ご飯を炊く苦労もあまりありません。全てが便利な仕組みとなっているのです。当たり前だと思っていると、考える力や生きる力は失われていきます。「ARTORO(アートロ)」の活動は、そんな便利な生活を見つめ直し、考える力や生きる力を養ってくれているのです。

2020年度は住居について引き続き検討予定とのこと。どんなプログラムになるか、今、計画中。お知らせは「登呂会議」のFacebookや登呂博物館のホームページ等に掲載されるとのことです。

更新日: 2020/04/07 () 15:30

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