「根付かせよう、市民活動。好きな静岡をすてきな静岡へ」をスローガンに掲げる「静岡市番町市民活動センター」。旧小学校の校舎を改装して、2009年に開設されました。センター長の五味響子さんにお話を伺って感じたのは、地域や市民の共感の場を創りながら市民活動の輪を広げ、非営利活動団体のサポートに伴走型で従事していきたいという強い思いでした。
五味響子さんは、2013年度から「静岡市番町市民活動センター」のセンター長を務めています。センターの活動には、公と民、それぞれの良さが生かされているとおっしゃいます。「センターは誰もが利用できる施設です。私たちの活動は、まず静岡市の要望に応えることがベース。そのため仕様書に基づき活動計画はきっちりと管理され、公平性が保たれる仕組みができています。その上で、民間の機動力で、今必要とされていることにスピーディーに対処することができます」。
「人のために何かをしたいと思った時に、一人ではできなくても仲間が集まればできる。それが市民活動団体になります。そこにあるのは、静岡市をより良くしたいという、草の根的な市民の思い。現在は、そうした思いを活動に繋げる手伝いをし、応援するのがセンターの使命です」と五味さん。
センター長に就任した8年前は、「市民活動ってなに?」という人がまだまだ多く、市民活動をわかりやすくかみ砕いて、伝え広めなければという思いが運営の軸になっていたそうです。しかし、次第に市民活動団体同士や活動と地域・市民を繋ぐような立ち位置にシフトチェンジしてきました。
現在、「静岡市番町市民活動センター」には、836の利用団体が登録されています。定期的に開催している「NPOよろず相談」は、NPO法人だけでなく、非営利活動に従事する団体すべてに対応しています。時には法律的分野の相談員が対応したり、司法書士など専門家に繋いだり、状況に応じて随時フォローをする伴走型の支援を行っています。
センターが発行する情報誌「ばんたび」は、年に4回発行しています。随時テーマを決め、取材と寄稿記事で編集。中面の開催講座の内容紹介、報告記事をスタッフがまとめています。また、センターの入居団体には、1年間ごと1団体ずつ紹介記事を執筆してもらい掲載しています。リレーエッセイも寄せてもらっています。
開催予定の講座やイベントは、同時に発行する広報誌「かわら版」でお知らせしています。
センター内には12のブースと4つの事務室を備えインキュベーション施設としての役割も果たしています。入居団体は多彩で、人の普遍的な困りごとに関するテーマで活動をしている団体が多いのも特徴。センターと入居団体との共催の講座も積極的に開催しています。
「そうした機会に、アドバイスできることをお伝えするようにしています。おかげさまでセンターの広報力が上がってきているので、より多くの様々な人たちが集まってくれますし」と五味さん。あくまでも、活動する人、団体に寄り添いたいという思いが伝わってきました。
毎年開催する周年イベント。「静岡市番町市民活動センター」では、旧校舎にあることから「番町学園祭」と、また配布するプログラムは「通信簿」と呼んでいます。2020年度は、新型コロナウイルス感染防止に配慮しての開催になりましたが、市民活動団体だけでなく、地域や市民に開かれたイベントに、という思いは変わらずに開催されました。
2019年度は10周年祭。体育館に設けられたステージでは様々なパフォーマンスが披露され、会場の真ん中には「むすんでつないで10周年」のキャッチコピーにちなんだシンボルマーク・おむすびちゃんの巨大オブジェが!
「静岡市番町市民活動センター」で働くスタッフは11名。五味さんをはじめスタッフは、NPO市民活動の相談にいらした方が笑顔になって帰ってもらえるような対応を心がけているのはもちろんのこと、センターの設備を利用しに来館した人とも、自然な会話の中から活動内容を知り、それに関した話題を提供するなど、温もりある対応ができるようになっていると、五味さんはスタッフを見ています。一方で、頑張って活動している人からスタッフの方が元気をもらえているといいます。センターが目指しているのは、“いろいろな場、座という存在”。人と知り合うことや、今まで自分が知らなかったことに興味を持てる人、そうした活動をおもしろいと感じる人たちが、自発的に来てくれる施設を、これからも目指していくそうです。
年間6回以上開催する主催講座は、あらかじめテーマを決めておくのではなく、その時々で必要とされている事柄をテーマに取り上げることもあります。助成金活用講座やICTに関わる講座など実務的な講座もありますが、特徴的なのは、市民活動における困りごとを解決したり、講座に参加することで元気になるような内容、社会情勢に即した講座が多いこと。そのほとんどが個人でも参加できる講座です。市民活動に参加している人もそうでない人も、講座を機に知り合い、お互いの話しを聞き合い、話し合うことを大切にしているからです。これらの講座で、自然な意見交換ができる工夫が凝らされているのが「座談会ライブ」です。
「座談会ライブ」では、テーマに詳しい人、その分野で活動している人を講師=トークゲストとして招きます。
トークゲストの話を聞いた後は、グループに分かれてテーマについて話し合います。参加者の膝の上にあるのは、「えんたくん」と名付けられた丸く切り取られた段ボール。みんなで支え合うテーブルを囲んで、様々な人たちと意見を交わす、まさに、ライブ感のある座談会が繰り広げられます。聞くだけでなく意見を口にすることで、“自分ごと”としてテーマへの理解もより深まり、団体、個人問わず、仲間ができます。コロナ禍以前は、年間2~3回開催していました。
こうした講座のテーマの中に、4年前から取り組んでいる「SDGsを考える」講座があります。これまでに主催講座として6回、共催講座として15回ほど開催してきました。世界的取り組みのSDGs。“持続可能な開発目標”と言われても、漠然としすぎていて“自分ごと”にならない人も多いのではと、わかりやすいように身近なことに引きつけて学ぶ場を開いてきたのです。これまでに、10代から70代までの、性別、職業も様々な人たち、のべ600人ほどが参加しました。
2020年度は、市民が身近な問題として認識でき日常の中で行動に移せる「静岡ローカル指標」を、市民と一緒に考えました。2020年10月にキックオフ。そして12回のワークショップなどを経て2021年2月20日には「静岡のローカル指標をみんなでつくりました!」というお披露目の会を、会場とオンラインのハイブリッドで開催、みんなで目指す静岡の未来像「 まぁるいしずおか」の3つの目標が掲げられました。
目標1 つながりの輪が育っていく社会
目標2 水を巡る環境を守り育てる社会
目標3 もっと知ることから始めよう
これらをより詳しく伝える小冊子「静岡のローカル指標・まぁるいしずおか」も完成しました。
この数年間のこれらの取り組みによって、SDGsへの理解が深まっただけでなく、市民活動団体と企業や行政など、多様なセクターの方々がお互いのことを知るきっかけができ、活動がより活発になったとしたらうれしいと、五味さんはおっしゃいます。
そして、これまでは学びの期間、ここからは行動の10年に、と位置づけ、2021年度も引きつづき講座を開催するとともに、「まぁるいしずおか」というローカル指標を広めていくために動画作成やトーク会の開催など、積極的に発信をしていくそうです。
注目は、新たにスタートする「まぁるいしずおか・えもなトーク」。静岡で「エモい」活動をしている人、団体を紹介するトークイベントです。開催は毎月最終金曜日の夜。これからのプレミアムフライデーを、より良い社会づくりを模索し合い、SDGsを共に目指す仲間を見つける日にしてみませんか。
この他、誰もが参加できる講座はHPでも随時案内されます。気になるテーマを見つけたら、まずは話を聞きに出かけてみましょう。あなたの市民活動の第一歩になるかもしれません。
更新日: 2024/09/18 (水) 15:24