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「特定非営利活動法人開発教育FUNCLUB」

 静岡市

静岡市では、市と市民活動団体の協働を進めるために、静岡市協働パイロット事業を実施しています。 令和3年度は、「特定非営利活動法人開発教育FUNCLUB」の「しずおか自主夜間教室」ほか3件が採択されました。 しずおか自主夜間教室では、国籍、年齢関係なく学びたいという人を受け入れ、社会生活に必要な言葉習得のためのサポートや、社会活動の参画に必要なサポートなどを行っています。「開発教育FUNCLUB」代表の肥田進さんに、開催に至った経緯や背景を伺いました。

学習者に寄り添って、暮らしに直結するスキルアップをサポートする

「しずおか自主夜間教室」は、教育の機会を失った人や在留外国人・形式卒業者への基礎的学習支援を目的に実施。肥田進さんが代表を務める「特定非営利活動法人開発教育FUNCLUB」が、静岡市の葵生涯学習センターの協力を得て、月2回開講しています。
参加人数は開催日によって異なりますが、通常は5、6人、多い時でも10人程度と少人数で、基本的には学習者の能力に合わせたマンツーマンでの指導、また一人の学習者に対して2、3人の講師が付くこともあります。国籍、年齢関係なく学びたいという人を受け入れて、現在は9割が日本語の読み書きを学びたいという外国ルーツの人です。言葉だけでなく日常生活に必要な行政手続きなどもサポートしています。

「しずおか自主夜間教室」を主催する肥田進さん(左)、葵生涯学習センターのスタッフ小松万留実さん(中)、講師の寺田梓さん(右)。

講師の顔ぶれも様々。大学の教授や講師、現役の教員、一般社会人、なかには大学生も。現在30人ほどがボランティアで活動し、市外から来てくれる講師もいるそうです。外国語を話せる講師は、できるだけその国出身の人を担当します。

南北問題を扱い開発教育に長年従事してきた肥田代表

「特定非営利活動法人開発教育FUNCLUB」代表の肥田進さんは、現在66歳。小学校の教員として働いていた2000年にNPOを設立。先進国と開発途上国の間に横たわる経済格差等に関わる南北問題について考えるワークショップを通して、アフリカや南米の貧困問題は日本人も無関係ではないということを伝える開発教育に力を入れていました。
また、多文化共生社会を実現するための市民の協働を促す「アースカレッジ」を10数年にわたって開催してきました。

20年以上NPOの活動を続けている肥田さん。「貧困問題は開発途上国だけでなく、日本にもあるし、私たちの生活に原因があることを、皆さんにもっと知ってほしいと思っているんです。」

「しずおか自主夜間教室」開講のきっかけとなったのは、夜間中学の必要性を訴える映画「こんばんわⅡ」の、静岡での上映を依頼されたことでした。
「不登校などで基礎的な学びを受けられなかった人たちは、社会参画するためのツールをもっていない。生活支援を受けようにも、文字の読み書きができない場合もあるのです。基本的な学びを必要とする人、いくつになっても学びたいという意欲のある人のために、夜間中学は必要だと感じました。」

教室に通う外国人は、能力に合った日本語を学習しています。学習者が学びたいことを学び、困っていることを解決するために、各講師が教え方を工夫し、スタッフが生活支援をしています。


「現在の日本の教育システムでは、中学校卒業までは学校の先生が面倒を見てくれますが、卒業後はすべてが自己責任。不登校だった人々は社会生活に参画できずにいます。当初は自主夜間教室で、外国人に日本語を教えればいい、引きこもりの人には学校に通えなかった小中学校の勉強を教えればいいと単純に考えていました。けれども、事態はもっと深刻でした。例えば、中卒の人は就職することが難しいのが現状です。そこで高校卒業資格を取るために定時制高校への進学を勧めるのですが、その手続きの仕方がわからないのです。願書をどこでもらうのか、どうやって記入するのか、書類の書き方がわからない人もいるのです。」

理解しやすいよう工夫を凝らして進める学習時間

「しずおか自主夜間教室」では、学習者のレベルに合わせた本やカードなどの教材を使って、楽しく学習できる工夫をしています。お話を伺った寺田梓さんは、2021年10月から講師を務めています。最近では、言葉を聴覚だけでなく、視覚でも理解してもらうように、スマートフォンで画像を見せることも多いそうです。
「講師の中には現役教師もいらっしゃいます。そういう教え方が上手な講師の進め方も参考にします。一番難しいことは、学習者の素朴な疑問に答えることですね。私たちが当たり前に思っていることほど、説明するのに困ることが多いんです。今は自然と担当制のような形になっているのですが、これからは学習者のニーズやレベルを講師同士が共有し、どの講師が付いても同じように学習を進めていける仕組み作りを検討しています。」

講師をしている知人から「しずおか自主夜間教室」の話を聞き、自らも講師として活動している寺田さん。学習者がきちんと理解できる教え方を心がけています。


葵生涯学習センターのスタッフ小松万留実さんは、「しずおか自主夜間教室」の運営を、事務的な側面で支えています。
「教室に必要な教材を揃え、教室の様子を撮影し記録を取るといったサポートをしています。教室を見ていて、進行具合に応じて必要になりそうな備品を途中で用意することもあります。高齢者や子ども向けの教室のサポートもしていますが、この教室は学習者の学ぶ様子から、私自身いろいろと刺激や気付きをもらっています。」

ひらがなやカタカナを覚えるためのカードや、優しいことばで文化が学べるテキストなど、教室で使う教材は様々なものが用意されています。


学びたいという思いを持つ人の居場所になるように

肥田さんは、夜間教室は確実に社会のニーズがあるとおっしゃいます。
「静岡市内にも1000人くらいはサポートが必要な人がいると思います。外国人は1万人ほどでしょうか。みんなで楽しく勉強したいという80代、90代のお年寄りもいる。そうした人がここに来ると、皆さん家族のように打ち解けていく。そんな教室をめざしています。超高齢化社会の独居老人問題にも対応できる可能性があるんです。」

講師やスタッフとの交流で、学習するだけでない安心できる楽しい居場所を目指す「しずおか自主夜間教室」。ここは共生社会を目指す人のシェルターにもなります。


不登校の子ども、障害者、引きこもり、独居老人など、日本人の中でも支えを必要としている方々は多く存在します。「こうした人に、教室に来てもらうまでが大変」と肥田さん。現在は外国人が利用するエスニック料理店やハローワーク等で教室のチラシを配布していますが、人づてに聞いて来る参加者が多いそうです。今後はより周知を高めるため、団地や福祉施設にも配る予定です。
「参加者の中には途中で挫折してしまう人も多いんです。一度でも参加してもらったら、とにかく、ここが楽しい場所だと認識してもらうことが大事だと考えています。困ったことを相談できる、そして誰にとっても居場所になる「しずおか自主夜間教室」に。そんな思いで活動を続けていきます。」 

更新日: 2024/09/18 () 15:23

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