静岡市では、2023年から2030年を期間とする「第4次静岡市市民活動促進基本計画」の策定に向けて、パブリックコメントを募集しました。市民から幅広く意見を集めるため、2回の市民ワークショップも開催。2022年12月10日、静岡市番町市民活動センターで開催されたワークショップの様子をレポートします。
「市民活動ってなんだっけ?」というテーマで開催されたワークショップには、高校生も含めた12人が参加しました。ファシリテーターを務めるのは、一般社団法人マチテラス製作所の代表理事、深野裕士さんです。初めに、今回のワークショップの目的、ゴール、ルール、それぞれの役割を確認しました。
【目的】
市民活動への理解を深め、活動を活発にするアイデアを考え共有する。
【ゴール】
市民活動について、来る前よりも少しわかった、ちょっとやる気が出た状態で帰る。パブリックコメントを書いてみる。
【ルール】
質より量を重視、意見や感想もたくさん出す。お互いの意見、考え方を大切にする。楽しむ(創造の源)。
【役割】
(参加者)楽しむ、市民活動を自分事にする。(深野さん)進行役。(静岡市の担当者)意見を持ち帰り大切に計画に活かす。
ワークショップに入る前に、市民活動をひと言でいうとなんだろうと、参加者それぞれが考えてみました。深野さんは、今回のワークショップで参加者に認識してほしい市民活動の定義について一例を用い、「市民とは、この社会で暮らしている一人ひとりのこと。他人のことも自分のことも考える人です。市民活動とは、市民のみなさんの、そして私たちが暮らす社会の幸せづくりのために活動すること。市民活動は、市民一人ひとりの活動がベースにあります」と、市民それぞれが主体的に活動していくことが基本になると説明しました。
静岡市では、市民活動を応援するための計画を立てています。それを知り、パブリックコメントを考えてみることも、今回のワークショップの目的のひとつです。静岡市市民自治推進課の田中雄基さんから、第4次静岡市市民活動促進基本計画(案)の説明を受けました。
これまでの第3次計画までで達成できたことは、市民活動センターの利用登録団体や、認定NPO法人が増加したこと。一方で、2020年から始まったコロナ禍の影響で、事業の中止や延期、非接触・非対面様式への転換で活動が減少してしまいました。
第4次計画案(案)では、「多様な人びとが、あたりまえに活躍できるまち 〜主体的にチャレンジできる、自発的に支えあいができる、静岡〜」をスローガンに、4つの施策を打ち出しています。
▶第4次静岡市市民活動促進基本計画(案)
このあと、静岡市から説明のあった第4次計画(案)の内容についてどんなことを思ったか、テーブルに広げられた模造紙に自由にメモ書きをしながらグループ内で発表しました。
【上げられた意見(一部)】
・休日も忙しくて何ができるかわからないが、できることがあればやってみたい。
・静岡市の市民活動推進の指標は?協働できることはあるか、アクションをどう進める?
・計画があることを知らなかった。
・柱があるのは良い
・市民活動について知らせるための活動もあると知ってびっくり。
・今のままでは抽象的なので具体的に知りたい。
・営利目的ではなく幸せづくりが目的。
こうした意見から、静岡市としても市民活動を活発にするために様々な取組をやっているものの、まだまだ周知されにくく、市民の皆さんにも意識されていない現状もわかりました。
ファシリテーターの深野さんは、「市民活動は、抽象的でわかりにくいかもしれません。例えば、子どもの遊び場を提供する、子ども食堂を開催する、子どもとのお散歩を受け合うなど、子どもに関した活動でもいろいろあります。一つの課題の中でも活動は多種多様なので、できるところから参加してみるといいと思います」とアドバイスしていました。
次に意見交換をしたのは、「市民活動をより活発にするためにはどうしたらいい?」というテーマでした。“質より量”で、思いつくままアイデアを付箋に書き出していきました。
【上げられた意見】
・市民活動を生活の一部にする。飲食店などを交流の場にしてイベントを開催するとか、学校で教えるとか。
・情報を知るきっかけがないから、SNSでインフルエンサーに協力してもらう。
・基本方針への意見を、学校にあるような意見箱などでも募集する。
・静岡市は人口減少、特に若年層が流出している。まちの魅力が市民に周知されていない。有志でまちあるきのイベントを開催して、地元の魅力を知る機会をつくる、など。
・行政のHPを見やすく、魅力あるものにして。
・静岡人特有の気質なのか、一回で満足してしまい、次につながらない部分がある。
・子どもでも、大人に意見が言える環境づくりが大切。
・クラウドファンディングで資金を集める。
参加者の意見を聞いた後、深野さんからは「伝える努力、工夫があると活動は活発になります。そうしたアイデアを、計画に入れてもらえるとより良くなると思います。教育機関との連携も必要。また、自分が市民活動をやっているとしたら、どう応援してもらいたいか考えるのも大事です」とアドバイスをいただきました。
最後に、参加者、主催した静岡市の担当者、ファシリテーターの深野さんの感想をまとめました。
【参加者の声】
「自宅を一部開放して、認知症や要支援者の人を対象に無人販売をやっています。これが市民活動に当たるのかどうかわからず、場違いかもしれないと申し込みを悩んでいました。参加してみて、いろいろな人の意見を聞けて、やってて良かった、ここに来て良かったと思えました。若い人の意見も参考になりました。SNSの活用は難しいけれど、今後の課題にして、次のステップに進んでいきたいです」
「大学に進学して今は東京に住んでいますが、静岡での就職を考えています。そのために、地元の課題を知るにはいい機会だと思い参加しました。ワークショップは、初心者でも参加しやすいグループワークで話しやすかったです。市民活動の周知にSNSを活用するなど、若年層だからこそ活躍できる手段があると感じました」
「市民活動がわからなかったけど、学校のポスターで知って参加しました。市民活動に対する理解を深められました」
「緊張しながら来ましたが、自分ひとりより、みんなの意見が聞けて新たな考えも生まれてきました。対話することが大事なんですね」
「市民活動についてまったく知識がなくて、友人と連れ立ってきました。少しは知識を得られ、市の支援があることもわかりました。高校生でも部活の合間に参加がするなど動けることがあるなと思いました」
【静岡市市民自治推進課 田中雄基さん】
「市民活動は特別なものではありません。何をやるかというところから考えるのは難しいですが、地域の催しの手伝いをすることも市民活動のひとつ。こうした身近なところから参加してほしいですね。静岡市に意見を寄せたり、市民活動センターのイベントに参加してみることも、市民活動に触れていただくきっかけになると思います」
【ワークショップの運営を担当した静岡市市民自治推進課 大石涼馬さん】
「今回のワークショップでは、活発に意見を出してもらえ、市として必要なことが明確になったり、ハッと気づかされる意見も多かったです。市民活動は堅い、難しいといったイメージがありますが、実は草の根の小さな活動から始まるもの。自治会の催し、清掃活動、PTA活動なども自分事にとらえて、静岡市のまちづくりに参加してほしいと思います」
【ファシリテーター 深野さん】
「普段のワークショップは、すでに市民活動をしている人が多いのですが、今回は市民活動について知りたいという人たちが多く参加していて、これは良いことだと思いました。
最近の市民活動は、コロナ禍の影響を大きく受けて、年配の方たちがずっと続けていた活動が休止していたり、そのまま活動をやめてしまうケースが目立っています。一方で新たな活動の芽が出て始めています。人が集まることができないため、みんなが集まって行うワークショップも3年くらい開催できませんでした。それでも、オンラインも浸透し、活動の幅も広がっています。
市民活動の第一歩は気軽に参加すること。まちづくり、まちの課題や未来について、自分たちで考えていいこと、自分たちが関われることをまず知り、自分の好きなことでまちを良くする活動を続けてください。その自由と権利が、私たちにはあるのです。
今は社会情勢的にも、暮らしにゆとりがなくなってきています。収入を得るためには仕事を優先にせざるを得ず、活動する時間が取れないという人も多いことと思います。だからこそ、市民活動の重要性も高まっているのです。市民活動はまちづくり。まちづくりはみんなの幸せづくり。一人ひとりが主体的に、自発的に関わることでやりがいに繋がります。楽しみながらできるとさらにいいと思います」
更新日: 2024/09/18 (水) 15:25