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令和4年度静岡市協働パイロット事業「若手先生もできる!地域人材と連携してできる!もういちど幼児公教育現場に自然体験を」活動レポート

 静岡市

近年、子どもたちが身近な場所で自然に触れられる機会が減ってきています。令和4年度静岡市協働パイロット事業採択団体である、特定非営利活動法人しずおか環境教育研究会(以下、略称のエコエデュと表記)は、こども園などの幼児公教育現場で取り入れられる自然体験を提案、若手教員の育成を軸に事業を実施しました。静岡市立安倍口中央こども園で2022年11月9日に行われた、モデルプログラムの実施及び動画撮影の様子をレポートします。

市民や子どもたちが自然環境に向き合う力は、静かに着実に低下している

なぜ子どもたちが自然に触れる機会が減っているのでしょうか。エコエデュ理事長の山本由加さんに伺いました。
「以前は、子どもの自然体験はお母さんが担っていました。時代とともにライフスタイルが変化して、結婚、出産後もキャリア継続する女性が多くなると、子どもと一緒に自然に触れるのも、育休中のせいぜい半年くらいしかできないのです。また、社会インフラが整ってくるのと反比例して、身近な自然環境が減り、さらに少子化で子どものコミュニティも減少し、自然の中で代々受け継がれてきた子どもの遊びも途絶えてしまっているのが現状です」。こうした状況では、公教育で自然体験を組み込まないと、子どもが自然に触れる機会はさらに減ってしまうという危機感が切実になります。けれども、教育の現場では「必要性は感じるが機会がない」「先生自身が自然や虫が苦手で、子どもに教えられない」という実情が浮かび上がってきました。
「家でも学校でも自然に対する経験値を積めないまま育った人が社会の大多数になると、“未知の自然“に対して挑戦をする人がいなくなりますよね」。(山本さん)

行政との連携で、自然教育を通じた環境教育をより広く社会に浸透させていく

エコエデュの前身団体は、教育を通して環境問題に対する意識を変えていく活動を、市民に向けて行っていました。その後、子育て中の母親から子どもの自然体験を求められるようになり、主に小学生を対象とした環境教育を始めました。16年ほど前からは対象を幼児にも広げています。
エコエデュでは、これまでも行政との協働事業を多く手がけていましたが、近年では共稼ぎの家庭が増え、幼児向けのプログラムへの参加者が減り、このままでは幼児期の環境教育が社会に広がらないという課題を感じていました。自然体験が日常化するためには、教育の現場で若手の先生に動いてもらう必要があると考え、静岡市協働パイロット事業に応募し、公教育の現場とタッグを組むことでさらにもっと踏み込んだ活動を目指しました。自然教育の必要性を頭ではわかっていても、先生が虫が苦手でも花の名前を知らなくても、大切なことを子どもたちに気づかせることはできます。コロナ禍のため、若手の先生に伝えるための手段は、実地ではなくテキストとなる動画を作成することにしました。

子どもと一緒に、身近な自然を見て、触れて、気づく

園庭で行うプログラムの実施及び動画撮影は、静岡市立安倍口中央こども園の協力のもと行われました。

まずは「○○さんの顔をつくってあげよう」という、自然物で顔をつくる遊びです。指導員は子どもたちに鬼の絵を見せてから、「風に飛ばされて顔がなくなっちゃった、みんなで顔をつくってあげよう」と呼びかけます。それから目、口、髪など、鬼の顔になるパーツを園庭で探します。このようなストーリーに乗せることで子どもたちが主体的に自分の五感を使って探し始めます。

ここからは、先生たちも一緒に落ち葉や木の実、石などを探し、発見を楽しむことで子どもたちの興味を深めていきます。鬼の顔用に集めたパーツは紙に書いた顔の上に置いてみます。一度置いてから、「やっぱりこっち」と目と口を入れ替えてみたり、他のものに変えてみたり、置くものによって変化する表情を楽しんでいました。

途中、子どもが鬼さんの目になる木の実を砂場に埋めたことから、宝さがしが始まりました。指導員が「鬼さんの顔づくり」というきっかけを与えることで、子ども発の「宝さがし」という遊びが生まれました。

遊びが進むにつれ、園庭の自然物を見つける目ができてきた子どもたち。見つけた木の実や花を紙にこすりつけると、いろいろな色が出て、素敵な洋服の模様ができました。石や葉っぱを食べ物に見立ててハンバーガーなどをつくり、お弁当屋さんやジュース屋さん、お花屋さんなどのお店が次々と開店していきました。途中、指導員が他の子の発見や遊びを紹介することで、遊びが広がっていきました。

今回動画を撮影した静岡市立安倍口中央こども園は、隣接する団地と同じ、昭和48(1973)年の開園です。園庭にはいちじく、キウイ、柿、栗など実のなる木が多く植えられています。また、すぐ近くには安倍川が流れ、河原へ散歩に行くこともあります。その際、園児たちはペットボトルでつくった「おさんぽバッグ」を持参、好きな自然物を宝物として集めて帰ってくるそうです。

プログラムを終えて

プログラムを体験した先生からは、「自然物を拾うことはあっても観察することはなかった」「自然物にはいろいろな発見があることがわかった。それを遊びに取り入れていきたい」といった感想が聞かれました。

園長の三浦君江さんは、最近は保育者自身が自然物に慣れておらず、虫が苦手だったり、草花のことをあまり知らないので、子どもに伝えるのが難しいと感じています。「家族とレジャー施設に遊びに行ったという話はよく聞きますが、自然に触れたという話はあまり聞かなくなりました。今日の様子を見ていると、子どもたちが自分で自然物を探し、工夫する様子が伺え、子どもに教えられることも多かったです。これからも、周囲の自然に気づく面白さを体験していってほしいですね」。

指導員を務めた柴崎千賀子さんは、「身近な園庭には自然がないと思われているが面白いもの、楽しいものはたくさんある」と言います。「今回の事業を通じて、先生たちに新しい視点の取り入れ方を学んでほしいですね。まずは、子どもたちが興味を持つきっかけをつくってあげること。それから、子どもたちの様子をよく見てほしいです。それによって、大人たちも身近な自然に気づくことがたくさんありますよ」。

写真左から、内野歩美さん(静岡市環境局環境創造課)、石川友紀さん(エコエデュ)、小林成彦さん(動画カメラマン/采映像制作)、柴崎千賀子さん(エコエデュ)、三浦君江さん(静岡市立安倍口中央こども園 園長)

エコエデュ理事長の山本由加さんは、大学で森林や林業について学びました。学生時代から環境問題に向き合う活動に関わる中で、すべての人に対して環境教育を行うのは難しいと感じてきたそうです。「けれど、せめて幼児期に保育の一環として近くの公園や豊かな自然環境で過ごす経験をしてほしい。私たち団体が地道に活動していくことも大事ですが、より社会への広がりができるパイロット事業で活動を行うことにも大きな意義があると考えています。今後、静岡市のYouTubeに動画をアップし、各園にも広報していきます。市民活動や短大の授業などにも活用してもらい、指導員の育成につなげていきます。動画は多くの人に興味を持って見ていただきたいと思っています」。

更新日: 2023/04/17 () 08:32

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