NPO法人　WAC清水さわやかサービス
居住支援法人統括責任者
鈴木　久義さん

居住支援法人の仕事

　居住支援法人の主な仕事は、住まいを提供する不動産会社と入居したい相談者のマッチングです。マッチングとひとことで言っても、入居に至るまでにはケースごとにさまざまな支援が必要です。
　支援の対象となるのは、主に高齢者、障がい者、外国人、ひとり親家庭世帯等です。彼等は不動産会社や大家さんから精神障害があるというだけで断られたり、高齢者は近くに身寄りがいないといった理由で、入居を断られることが多く、生活の基盤となる「住まい」の確保が困難な状況にあります。

ネットワークを活用して住まい探し

　相談を受けると、まずはその方のお宅に訪問し、現在の状況を確認します。相談者の状況はさまざまで、ゴミ屋敷になっているケースもあります。そういった場合は、行政や他の支援団体と連携しながら、今後の対応を決めていきます。課題を解決するためには多方面との連携が欠かせません。
　その上で、本人の希望や状況に適した物件や不動産会社を探し、提示します。物件が決まったら、契約書類の確認や入居の立ち合い、引っ越し業者の手配、住居の変更届けの手続きの手伝い等、「住まい」に関する全てのことを支援していきます。
　相談から入居まで10日前後の時間がかかってしまいます。迅速に対応したいと思っているのですが、限られた予算と人数で動いているので難しいです。

事業開始から現在まで

　2018年に居住支援をはじめた際に、住宅支援事業について知らせるチラシを清水区全戸（20万部）に配布しました。それと同時に、静岡市内の不動産会社を100社以上回り、協力をお願いしました。断られることもありましたが、20社以上の会社から協力の申し出を受けることができました。
　また、家を探している方に不動産会社や大家さんに入居を断られた理由を聞くと、それぞれが抱えている問題に対する偏見があり入居について不安を感じていることがわかりました。その解消のために、ヘルパーさんに週１度掃除に入ってもらったり、家賃を滞納することがないように指導する等、入居後のサポートもおこなってきました。個人的に心配だと感じる方は、近くを通りかかった際に様子を見に行くこともあります。
　相談件数は開所当初から数えると500件を超えました。そして、実際に入居までに至った件数は200件にのぼります。おそらく、全国でも一番多いでしょう。

▲チラシは困っている人に支援を知ってもらう有効なツール

台風15号と居住支援法人

　直後の被災者支援のためアパートの空き部屋のシャワーを使えるようにしたり、ボランティアで静岡市に来てくれた方たちの滞在拠点の確保等の支援をおこなったりと、対応に追われました。
　それから５か月が経過しましたが、家を探す相談の件数も増え、2021年の同時期と比べると２倍近い数になっています。
　今まで住んでいたアパートから立ち退きを求められた生活困窮者、高齢者や障がい者からの相談が大半で、現在も住まいが見つからない人がいます。
　被災から時間が経つほど精神的な負担も大きくなるので少しでも早く見つけたいところですが、前日の通りある程度の時間が必要です。
　より迅速に対応するためには、人も財政的な裏付けも足りないというのが現実です。それでも、これまでに築いてきたつながりを大切にしながら目の前の困っている人たちに住まいを提供できるよう、根気よく活動を続けていきたいと思います。