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地域おこしのために始めた手筒花火を、伝統文化として次世代につなげる「一色煙火保存会」

 静岡市

静岡市葵区の中山間地域、藁科川の支流に沿って広がる新間地域。その中にある一色地区で結成された「一色煙火保存会」は、一色天満宮の例大祭で手筒花火を奉納していました。2019年、担い手不足のため一色の手筒花火が途絶える危機を迎えましたが、住民の手で復活させようとクラウドファンディングを実施、再び地区の花火大会で、勇壮な手筒花火が揚げられました。2024年8月3日に開催された静岡市立服織西小学区の夏祭り納涼大会を取材し、「一色煙火保存会」代表の森山由朗さんにお話を伺いました。

手筒花火で地域に元気を取り戻す「一色煙火保存会」

「一色煙火保存会」は、少子高齢化が進む地域を賑やかに盛り上げようと、地域の住民14人が集まり2000年に立ち上げました。集落には1600年に創建された一色天満宮があり、そこで執り行われる五穀豊穣を祈念する例大祭で手筒花火を奉納するためです。

1824年から地域で手筒花火を揚げ続けている郷島煙火保存会(静岡市葵区郷島)の指導を受け、独り立ちをしてからは一色天満宮例大祭だけでなく、静岡まつりをはじめ、他の地域のお祭りやイベントで、勇壮な手筒花火を披露してきました。

一色天満宮の例大祭には、県外からも多くの人が訪れるようになりましたが、担い手の高齢化や資金不足などから、次第に活動継続が困難となり、例大祭での打ち上げを2019年に終了しました。けれども復活を願う声が地域の内外から寄せられ、再開を決意。翌年には代表の森山由朗さんが中心となって、ふるさと納税制度を利用したクラウドファンディングを実施。寄付金を活用して新たな会員を募集し、活動を再開。2022年、一色地区も含む服織西学区の花火大会で、再び手筒花火の火柱が噴き上がりました。一度は途絶えかけた手筒花火の技術を、18人の会員が今に伝えています。

「保存会の立ち上げメンバーのうち、4人がまだ現役。私もそのひとりです」という森山さん。「一色煙火保存会」発足当時は、新幹線の線路保守の会社で働いていました。定年退職前の数年は、毎日東京へと通っていましたが、「地元は自然が豊かで、帰ってくるとほっとした」と言います。

「少子化が進む地元で、若者の活躍の場をつくり、地元に誇りを持ってほしいと始めた手筒花火。地区の花火大会で見て、やってみたいと会員になる若い子もいるんですよ」。

地元の夏祭りを盛り上げた、迫力ある手筒花火

2024年8月3日に開催された、静岡市立服織西小学区夏祭り納涼大会。会場には出店がたくさん並び、あたりがほの暗くなる頃には、学区の子どもたちや地区内外の子ども連れの家族、お年寄りが大勢集まり賑わいました。

盆踊りに続いて、来場者が櫓の周りに輪になって、みんなで手持ち花火を楽しみました。その後は、いよいよ「一色煙火保存会」が披露する手筒花火です。

森山さんの「わっしょい!」というかけ声に、手筒花火を持つ保存会の人たちと、会場に集まっている人たちが「わっしょい!」と応え、盛り上がってきたところで手筒花火が点火されました。

火花の火の粉が滝のように降り注ぐ中、揚げ手がシルエットで浮かび上がる様子はとても幻想的。大きな筒だと火花の高さは10m近くになります。そして、最後は筒の底が爆ぜ、大きな音が会場に響きます。

両足を開き、筒は腿に当ててまっすぐに構える。森山さんが事前に手筒花火の持ち方を教えてくれました。

「熱いのはとにかく我慢。最後に底が爆ぜるまで緊張感が続きます。でも揚げきった充実感は最高です」。

そう話す森山さんの半纏には、焦げてあいた穴がところどころにありました。

今年は服織西小学校開校150周年。その記念として、子どもたちが地域への思いや感謝を記した寄せ書きを貼った大筒も用意。この2本の手筒花火で、夏祭りはクライマックスを迎えました。

子どもたちに伝える、外国人にも誇れる地域の伝統文化

森山さんは、2023年度から、手筒花火を題材に服織西小学校の6年生に2時間の授業を行っています。1時間は、手筒と打ち上げの違いなど花火の話。そして、外国人観光客は日本の伝統に魅力を感じていることなど、地元にいるだけではなかなか実感できない、社会の“今”の様子も織り交ぜて子どもたちに話をします。

「伝統を守る意義や大切さも子どもたちに伝えていかないと。もう一時間は、ワークショップ。子どもたちに手筒花火と同じつくり方で、小さな竹筒に麻ひもを巻いた一輪挿しをつくってもらいます」。

若い担い手も活躍。目標は一色天満宮例大祭での手筒花火の復活

「一色煙火保存会」は、近隣の自治会や学区の夏祭りで手筒花火を披露して、技術を磨いています。

「活動を再開してから、今では年間7、8か所に出向いて手筒花火を披露しています。夏だけではないですよ。羽鳥地区にある龍津寺(りゅうしんじ)では大晦日から元旦にかけて、除夜の鐘とともに手筒花火で新年を祝います。
手筒花火は、自分で揚げるものは自分でつくります。山から切り出した竹を煮て、乾燥させて筒にして、火薬を詰める。火薬は季節によって乾燥具合などが違うんですよ。詰めるときに焼酎を混ぜるんだけど、その割合がなかなか難しくてね。20代の若い地元の担い手も頑張っていますよ」。

森山さんの活動歴は24年になります。保存会存続の危機を乗り越え、ここまで続けられたのはなぜでしょうか。

「花火を上げている間は熱いし、怖いし。正直、やめたいと思ったことは何度もあります (笑)。でも、見に来てくれた人の『良かった、きれいだった』という言葉が励みになる。その言葉をまた聞きたいと思うんです。ちょうどいい火薬の配合を自分なりに追求するのも楽しいんですよ」。

手筒花火を披露した他地区からも、子どもたちが喜んでくれるから翌年もお願いしたいと、依頼が来るそうです。

「手筒花火は、インバウンドの人にも興味を持ってもらえる伝統行事です。活動休止前は一色天満宮の例大祭に、県外からも大勢の人が集まってくれました。子どもたちには、この手筒花火を思い出にして地元に誇りを持ってほしい。そして大人になって都会に出ても、この思い出をきっかけに地元に戻ってきてほしい。

保存会としては、やはり、私たちの聖地である一色天満宮の例大祭で、奉納手筒花火を復活させたいですね」。

「一色煙火保存会」は、静岡市と協働し、ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングに、2025年2月28日まで挑戦しています(2024年9月17日現在)。
集まった寄付金は、新たな会員の募集、人材育成、手筒花火の製作費等に活用されます。

▼ふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングURL
https://www.satofull.jp/projects/businessdetail.php?crowdfundingid=414

更新日: 2024/10/01 () 09:33

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