あさはた緑地交流広場を管理運営する一般社団法人グリーンパークあさはた。公園という公共の場を、市民が主体的に関わり、自由な発想で親しみやすい場にしていくために、静岡市と協働して、みどりを活かしたまちづくりを担う人材の育成に取り組んでいます。 今回は、令和6年10月19日に開催された「こもれびコモンズカフェin あさはた緑地」の様子をレポートします。
残暑が厳しい令和6年10月19日、あさはた緑地の一画で「こもれびコモンズカフェ in あさはた緑地」が開催されました。開放的な公園の中でも、水辺のこもれびエリアは雑木林で程よく日差しが遮られ、風が吹き抜ける心地いい、園内でもとっておきの場所。文字通り緑に囲まれながら、まち、公園、みどりなどをキーワードに、参加者が自由におしゃべりするイベントです。
ファシリテーターは、長年環境教育に取り組んでいる山本由加さんが務めました。
簡単な自己紹介を終えた後、グループに分かれて日常の中で感じる“もやもや”を書き出します。こんな“もやもや”が出てきました。
「いつも時間が足りない」
「外でもっとリラックスしたい」
「外食ばかりしていて、たまには自炊したい」
「庭のキウイが熟すと鳥に食べられてしまう」
「公園に遊びに来ているが、自宅の庭は草ぼうぼう」
「ひとり時間も好きだけど、寂しい時もある」
公園とは関係がなさそうに思いますが、この中から、公園をもっと使いやすく整備し、活用するヒントが見つかる可能性があるそうです。
次に、実際に市民が率先して公園を活用した事例を聞き、公園の果たす役割や可能性を学びました。
公園とは、子どもの遊び場やお祭りの場所など地域の人が集まる場である一方、災害時の避難場所でもあります。また、緑や花があると、昆虫や鳥など生き物にとってのオアシスになります。けれども、なにも手入れをせず雑草だらけになってしまうと、住民が近寄らなくなり、ゴミが捨てられたりしてどんどん荒れてしまいます。「いっそのこと、そんな公園はなくしてしまえ」という極端な意見が出てくるかもしれません。
でも、本当に公園をなくしてしまっていいのでしょうか。公園は、「コモンズ=誰もが平等に使える空間」。行政や自治会・町内会まかせにせず、もっと親しみが湧き、使いやすい公園にするためにはどうしたらいいか、市民が意見を出し合って主体的に取り組んでいくことも大切です。
「こもれびコモンズカフェ in あさはた緑地」の最後のワークショップは、最初に挙げたもやもやを念頭に、どんな公園があったらいいか、公園でどんなことをしたいか考えました。
参加者からは、次のような意見が出ました。
「手ぶらで出かけても子どもが遊べる。地面にお絵かきできると楽しい」
「植物や生き物と触れあえる公園。植物の種やシロツメクサの花でネックレスをつくるなど、親が子どもの頃に経験したことが子どもも体験できるような場所がいい」
「泥んこになっても、洗い流せる水場を整備してほしい」
「公園に敢えて実のなる植物を植える。木の実や果実など食べられる植物があると興味が湧きそう」
「植物に食べられるか、薬草など何に使うかなど説明の札があったらおもしろい」
「花の種を蒔くツアーで、大きな公園の間をつなぐ緑の回廊を増やす」
公園が直接、もやもやを解消するわけではないのですが、整備に参加することで人との出会いがあったり、きれいになった公園に集うようになったりして、ストレスが解消され、日常の中に新たな楽しみを見出すこともできます。
参加者からは、
「農業高校出身なので、みどりにはなじみがあるが、いろいろなところで、もっと緑化の輪が広がるといい」
「初めて参加した。どういう展開になるのかわからなかったが、いろいろな人と話をして意見交換もできてよかった」
という感想が聞かれました。
ファシリテーターの山本さんは、
「暮らしに直結した楽しいことが、身近な公園でできるといいなと思っている人は多いです。こうした意見を行政に伝えることで、実現の可能性が芽生えます。『こもれびコモンズカフェ』のようなイベントから、公園づくりに積極的に関わる仲間を増やしていきたいですね」
と話します。
「こもれびコモンズカフェinあさはた緑地」は、静岡市と市民活動団体との協働を促進するための枠組みである、静岡市協働パイロット事業の一環として実施されています。一連の事業を統括する、一般社団法人グリーンパークあさはた代表理事の木下聡さんにお話を伺いました。
「協働パイロット事業で実現したいことは、主に『みどりを活かしたまちづくりをする人材育成のためのプログラムを作ること』『みどりを活かすとはどういうことか、市民の意見を吸い上げること』『公園やみどりについて、自由に話し合う場をたくさんつくること』この3つです。
公共空間の利活用は行政主導で行うものと考える市民が大半で、パブリックコメントでも自由に本音を語りづらいのが現状だと思います。そこで、実際にみどりに囲まれながら『こんな公園があったらいいな』という意見を自由に交わしてもらい、関心を持つ人たちが主体的に公園やみどりを活かしたまちづくりに関わる人材として活躍してもらいたいと考えています。公園づくりではなく、あくまでも公園という公共の空間を活用する視点から、まちづくりに精通するコーディネーターの育成が最終目標です」。
木下さんたちが管理運営するあさはた緑地には、豊かな自然が広がります。自由に遊んだりイベントの会場に利用されたりする原っぱ広場や、遊具があるわんぱく広場の他にも、きれいな湧き水が流れる小川に架かる木道を散策できるふれあいの水辺が整備されていて、一部小川の中に自由に入れる場所もあります。
また、自然農法や有機農法で米や特産のれんこんを栽培する農園など、自然と人の営みをつなぐエリアもあり、木下さんたちもレモングラスを栽培し、こもれびコモンズカフェで参加者にレモングラスティーを自由に飲んでもらいます。
農園や緑地では生物多様性も感じられます。日本の絶滅危惧種となっているミズアオイなども自生しています。
木下さん「僕たちが管理するあさはた緑地を、市民がもっともっと公園づくりに参加できる場所にするために、スタッフと一緒に活動してくれるボランティアメンバー、あさはた緑地サポーターがいます。(現在、新規登録募集はしていません)また、自主イベントも開催しますが、より多くの方たちがさまざまなアイデアであさはた緑地を活用してもらえるよう、僕らからは、イベントを提供しすぎないように配慮しています」。
一般社団法人グリーンパークあさはたでは、行政をはじめ、コミュニティスペースとしての庭づくりや自然教育の第一人者、まちづくり活動を行っている人材と連携しながら、今後も「コモンズ」である公園づくり、緑地づくりを、市民のみなさんと一緒に進めていきます。
更新日: 2024/12/11 (水) 09:21